台風や強風のニュースを見るたび、窓や屋根、家族の安全が心配になりますよね。
秒速35メートル前後の風が実際にどれほどの被害をもたらすか、体感や被害目安が分かりにくいのが困る点です。
本記事では体感、住宅や屋根の損壊目安、樹木の倒伏や車両横転のリスクまで具体的に解説します。
風圧の計算やボーフォート換算、工事現場での中止基準や屋内退避の判断まで実用的な対策も提示します。
まずは秒速35メートルがどの程度の強さか把握し、安全な行動の基準を一緒に確認していきましょう。続きへどうぞ。
風速35mはどのくらいの強さ

風速35メートル毎秒は、日常で体験する強風とは次元が異なる力を持っています。
台風や瞬間的に強まった暴風域で観測される風速であり、広範囲に被害を与える可能性があります。
体感
体感としては、歩行が非常に困難で、風に押されて前に進めないことが珍しくありません。
小さな飛来物でも人に当たれば大きな衝撃を感じます。
- 身体が前に押される感覚
- 耳鳴りや風の唸り
- 飛来物の衝突音
- 視界の悪化
住宅の損壊目安
住宅に対する影響は建材や築年数、補強状態によって差がありますが、部分的な損壊が発生しやすい状況です。
被害箇所 | 想定される状況 |
---|---|
屋根 | 瓦のずれや一部飛散 |
窓 | ひび割れや破損 |
外壁 | シートの剥がれや塗装の剥離 |
樹木の倒伏
大径木でなくても、根元が弱っている木や沿道にある木は倒れる可能性があります。
倒伏すれば住宅や車両に直撃し、二次被害を引き起こします。
車両の横転リスク
高さがあり重心が高い車両は横転しやすく、特にトラックやバンは注意が必要です。
風向きが急変すると横からの強い力がかかり、路上での安定性が失われます。
屋根の吹き飛び
屋根材の固定が不十分な場合、部分的に吹き飛ぶか、あるいは大きな面が剥がれることがあります。
屋根材が飛散すると、落下物による二次被害や停電の原因になります。
電柱・電線の被害
電線に付着した氷や樹木の接触があると、負荷で電線が切れたり電柱が倒れることがあります。
停電が広範囲に及ぶとライフラインの復旧に時間がかかる場合があります。
交通網への影響
高速道路や橋梁では横風による通行止めの基準を超えることがあり、運行停止が発生します。
鉄道でも架線の損傷や倒木による運休、遅延が生じやすいです。
航空機は離着陸に影響が出るため、欠航や遅延の判断が早めに行われます。
建築物・屋根への具体的影響

風速35メートル毎秒は建築物に対して無視できない負荷を与えます。
屋根材の種類や経年劣化の程度、取り付け状況によって被害の出方が大きく変わります。
以下では代表的な屋根や外装について、想定される被害と注意点をまとめます。
瓦屋根の飛散
瓦は一枚一枚が比較的重いため、完全に吹き飛ばされることは限られますが、固定が緩んでいる瓦は簡単にずれやすくなります。
棟瓦や袖瓦の接合部に隙間があると風の巻き上げで持ち上げられ、連鎖的に複数枚が外れることがよくあります。
瓦の下地である野地板や貫板が腐食している箇所では、そこから一気に崩壊が進行する可能性が高いです。
飛散した瓦は遠くまで飛ぶ危険があり、人や車両に致命的な被害を与えることがあります。
事前点検で確認しておきたい項目は以下です
- 棟瓦の緩み
- 釘や金具の腐食
- 下地の腐朽
- 瓦の割れや欠け
トタン屋根の剥離
トタンやガルバリウム鋼板の屋根は薄く軽いため、風の負荷に対して剥離しやすい性質があります。
特に釘留めやシーリングが劣化していると、風圧でめくれ上がり、広い範囲で剥がれることが考えられます。
以下は状態別の被害イメージです
屋根の状態 | 想定される被害 |
---|---|
新しくしっかり固定されている | 部分的なはがれ予防できる |
釘やビスが緩んでいる | 局所的にめくれ上がる |
シーリングや下地が腐食している | 広範囲の剥離の可能性高い |
剥離した金属板は風に煽られて刃物のように振る舞うため、周囲の安全確保が重要です。
窓ガラス破損
風圧そのものよりも、飛来物の衝突で窓ガラスが割れるケースが多く見られます。
外れた瓦や看板の一部が窓に当たると、フロートガラスは簡単に破損することがあります。
合わせガラスや防犯ガラスが使われている場合は破片の飛散が抑えられ、被害軽減につながります。
雨や砂が窓枠に侵入してシーリングが劣化すると、次回以降の風で窓枠ごと破損する恐れが高まります。
短期的な対策としては、カーテンを閉めるか板などで補強することが有効です。
外壁のはがれ
外壁は風の摩耗や飛来物、雨水侵入による下地の劣化で剥がれやすくなります。
サイディングのジョイント部やモルタル塗りのひび割れ部は、風で蹴られるように拡大することがあります。
外壁材が剥がれると内部の断熱材や防水層が露出し、二次的な雨漏りや構造劣化に直結します。
被害を最小限にするために、事前にひび割れの補修やシーリングの打ち替えを行っておくと安心できます。
人身・移動時の危険度と安全対策

風速35メートルは強い暴風に相当し、人や移動手段への影響が大きくなります。
この章では歩行、自転車、車両ごとの危険点と具体的な対策をわかりやすく解説します。
屋内退避の判断基準についても実践的にまとめます。
歩行の転倒リスク
歩行中は体が受ける横方向の力が大きくなり、バランスを崩しやすくなります。
傘を差すとさらに受風面が増え、転倒や飛ばされる危険が高くなります。
歩行時は風向きに対して斜めに歩く、歩幅を狭める、なるべく低い姿勢を取ると安定します。
手すりや建物の陰を使って移動することを心がけてください。
視界が悪い場合は足元の段差や飛来物に注意する必要があります。
自転車の転倒リスク
自転車は風の影響を受けやすく、ハンドル操作が不安定になりやすいです。
風速35メートルでは走行中に突然横風を受けて転倒する可能性が高まります。
安全対策としては無理に走行せず、自転車を押して歩くか、可能なら公共交通機関を利用してください。
荷物は体に密着させ、カゴや荷台に風を受ける物を載せないでください。
夜間は視認性を高めるためにライトと反射材を必ず装着してください。
車両横転リスク
高い風速では車体の側面に大きな圧力がかかり、特に背が高い車両ほど横転しやすくなります。
高速走行や急ハンドルは危険を増すため、速度を落として走行してください。
停車する際は高架や橋上、開けた海岸沿いを避け、建物の影になる場所を選ぶと安全性が高まります。
以下は車種別の横転リスク目安です。
車種 | 横転リスク |
---|---|
軽自動車 | 高 |
普通乗用車 | 中 |
ワゴン車 SUV | 高 |
トラック 大型車 | 非常に高 |
トラックや大型バスは特に側面風を受けやすく、走行継続は避けるべきです。
横風が強い橋梁やトンネル出入口付近では接近を控え、安全に停車できる場所に避難してください。
屋内退避の判断基準
屋外で風速35メートルを観測した場合、原則として屋内退避を優先してください。
特に窓ガラスや看板の破損、飛来物の危険がある場所では直ちに屋内へ入る必要があります。
屋内にいる場合でも窓際を避け、頑丈な部屋の中央に移動することをおすすめします。
- 窓から離れる
- 外壁や看板の近くを避ける
- 高層階での屋外活動を中止する
- 車内は避難場所に適さない場合がある
- 周囲の指示に従う
自治体や気象情報の避難勧告・指示が出た場合は速やかに従ってください。
電線切断やガラス飛散など二次被害の危険があれば、自衛も考えつつ安全な集合場所へ向かってください。
観測・計算で知る風速35mの数値的意味

風速35メートル毎秒が実際にどれほどの力を持つかは、観測値だけでなく物理計算で具体的に理解できます。
ここでは風圧の計算式や換算、そして気象表現との対応をわかりやすく説明します。
風圧の計算式
風による圧力は動圧と呼ばれ、空気密度と速度の二乗で決まります。
標準大気の密度を1.225キログラム毎立方メートルとすると、基本式は p = 0.5 × ρ × v^2 です。
これに風速35メートル毎秒を代入すると、p ≒ 0.5 × 1.225 × 35^2 となり、約750パスカルになります。
パスカルはニュートン毎平方メートルと同義ですので、1平方メートル当たり約750ニュートンの力が働く計算です。
わかりやすくすると、1平方メートル当たり約76キログラム重相当の力が持続的に作用するイメージになります。
ボーフォート風力階級換算
風速35メートル毎秒は、ボーフォート風力階級で最上位に相当します。
伝統的な分類と現在の数値基準を簡潔に対比します。
階級 | 特徴 |
---|---|
10 | 非常に強い風 海は高波となる |
11 | 猛烈な強風 構造物に深刻な影響 |
12以上 | 暴風域 建物や樹木に大規模被害 |
ここで示した通り、35メートル毎秒は階級12の範囲内で、ボーフォート表現では最も危険な領域です。
秒速と時速の換算
秒速を時速に換算するには3.6を掛けます。
したがって35メートル毎秒は約126キロメートル毎時です。
海上や航空、航海でよく使われるノットに換算すると、35メートル毎秒は約68ノットになります。
時速やノットの感覚を持つと、道路上や海上での危険度を直感的に比較しやすくなります。
気象庁の表現と基準
気象庁は観測値として最大風速と最大瞬間風速を公表します。
- 最大風速
- 最大瞬間風速
- 強風注意報
- 暴風警報
最大瞬間風速は突風の強さを示し、建物被害との関連で重要です。
気象庁の警報名は地域や状況により発表基準が異なるため、受け取った警報の内容を確認することが大切です。
風速35メートル毎秒は、発表されれば暴風警報や特別警報の対象になり得るほど強い値です。
工事・屋外作業での対策基準

風速35メートル毎秒は非常に強い暴風域に相当し、工事現場や屋外作業に対して重大な危険をもたらします。
この章では作業中止の目安から足場やクレーン、保護具の点検まで、実務で使える対策の目安を示します。
作業中止の目安風速
まず作業継続の判断は平均風速だけでなく突風の記録を重視してください。
一般的な目安として、地上作業でも平均風速が10メートル毎秒を超える場合は注意喚起が必要です。
高所作業やバランスが取りにくい作業では平均風速で12〜15メートル毎秒を中止ラインとする現場が多くあります。
クレーン作業や足場での吊り上げでは、風速15〜20メートル毎秒で全ての運転を停止することが望ましいとされています。
風速が25メートル毎秒を超えると、通常の緊急対策に加え全面撤収を検討すべき状況です。
35メートル毎秒は生命に関わる危険域ですので、即時作業中止と安全な屋内または車両内への退避が必要です。
最終的には機械や仮設物のメーカー指示、現場の安全管理者の判断に従ってください。
足場固定の強化
足場は風の荷重を大きく受けるため、事前に固定強度を見直すことが重要です。
横揺れ防止や基礎の補強、ネット類の取扱いを整えておけば被害軽減につながります。
- 追加アンカー設置
- くさびの再締め付け
- 対角ブレースの追加
- 防風ネットの一時撤去または強化
- 脚元の水抜きと地盤保護
作業再開前には必ず有資格者による目視点検と荷重試験を行ってください。
クレーン運転の停止基準
クレーンや揚重機は風の影響で荷が振れ、重大事故につながりやすい装置です。
以下は現場でよく使われる目安表です。ただし最終判断は機械メーカーと資格者の判断に従ってください。
機器種別 | 運転中止の目安風速 |
---|---|
移動式クレーン | 10〜15 m/s |
タワークレーン | 15〜20 m/s |
高所作業車 | 8〜12 m/s |
小型ウインチ・軽荷重吊り | 6〜10 m/s |
表の数値はあくまで目安ですので、風向きや突風の頻度、荷の形状を勘案して保守的に判断してください。
安全帯・ロープの点検
風が強い日は安全帯やランヤードにかかる負荷が増すため、点検回数を増やすことを推奨します。
作業前点検で確認すべきは擦れや切断痕、金具の変形とロック機構の作動性です。
アンカーの引張強度と取り付け角度も確認し、使用可能範囲内かどうか判断してください。
経年や落下履歴がある器具は早めに交換するか、製造元の指示に従ってください。
風速が高いときは二重確保やバックアップロープの併用を検討し、万一のフック外れに備えてください。
被害発生時に取るべき優先行動

被害発生時はまず自分と家族の安全を確保し、落下物や倒壊の危険がある場所から離れてください。
負傷者がいる場合は迷わず119番に通報し、応急処置と状況の説明を行うことが最優先です。
ガスの臭いや火災の懸念があるときはガス栓を閉め、電源を切って安全な屋外へ避難してください。
倒壊の恐れがある建物や、倒れた電柱・ぶら下がった電線には絶対に近づかないでください。
可能であれば写真や動画で被害状況を記録し、保険や行政への報告用に保存しておくと後で役に立ちます。
近隣住民と協力して情報を共有し、自治体の避難情報やライフラインの復旧状況をラジオや公式SNSで確認してください。